【動画あり】エストレヤのフロントフォークOH手順を徹底解説【中級者向け】
「なんだか最近前輪ブレーキかけた時に沈み方が激しい気がする」
「段差をこえたときの衝撃が激しくなった気がする」
「そういえばフォークオイル変えたのいつだっけ?」
エストレヤに乗っててこんな疑問が浮かび上がってきて
今回、重たい腰を上げてようやくフロントフォークを整備しました。
ということで今回は
エストレヤのフロントフォークをオーバーホールして
オイル交換までやったので整備記録として
「作業手順」「使用したパーツ」
などを紹介していきます。
こんな方におすすめ
- フロントフォークの整備をしたい
- 整備のスキルアップをしたい
今回フロントフォークの整備をするにあたって
どのくらい整備してないか思い出してみたんですよ
そしたらなんと
乗り始めてから1度もやってなかった…。
ちなみにエストレヤは約6年乗ってます(汗)
6年間1度も交換してないとか我ながらやばいと思います。
フォークオイルは少なくとも
5,000〜10,000km or 年1回で1度は交換しましょう。
僕も今回の反省を今後に活かして
定期的にフォークオイルの交換も気をつけようと思います。
注意ポイント
フロントフォークのOH(オーバーホール)は“中級者向け整備“になります。
自信のない方は無理せずショップに任せるか、
知識と経験のある人に教えてもらいながら行いましょう。
このブログで紹介するのは「前後ドラムブレーキ」のエストレヤです。
ディスクブレーキのタイヤの外し方は紹介していません。
動画で見たいときはページの最後に
リンクを貼っています!
フロントフォークの役割
交換前に「フロントフォークの役割」についてざっくり解説します。
ポイント
フロントフォークの基本的な役割は
- 地面からの衝撃を吸収して車体を安定させる
というものです。
道路を走ってると凹凸があったりしますが、
そういったところを走ると大きな衝撃がバイクへ伝わります。
その衝撃をある程度フロントフォークが吸収してくれています。
後輪側にあるサスペンション(バネのようなパーツ)も同じ役割をしているんですね!
その衝撃緩和に大きく関わってくるのが“フォークオイル“です。
このオイルが劣化して水のようになると
フロントフォークはうまく衝撃を吸収・逃がすことができなくなります。
その結果、ライディングにも影響が出てくるというわけなんですよ!
前輪ブレーキで止まった時に
跳ね返るような感覚があったり。
乗れてるから良いやと放置してると
そのうち転倒事故につながる可能性もあるので
定期的な交換が必要になります!
フロントフォークのオーバーホール
フロントフォークのオーバーホールはオイル交換やシート交換とは違い
“一歩ふみ込んだ作業になる“ため僕は“中級者以上向け“と捉えています。
特にタイヤなどの足回りは間違った付け方をすると走行中の事故にも
つながってくる可能性があるので、注意しながら行いましょう!
注意ポイント
作業には必ず「サービスマニュアル」を最低限手元に用意しておきましょう。
事前にマニュアルを読んだり、動画を見て予習しておくと
作業当日にスムーズに作業を行えます。
用意するもの
今回はオイル交換のついでい消耗品なども一気に交換してくので
用意したパーツが多いです。
参考にするときは
「どこを交換しておきたい」のかを
事前に決めておきましょう!
消耗品(パーツNo記載あり)
- Oリング (92055-1500)
- スプリング (44026-1518)
- ブッシング (44065-1104)
- ダストシール (92093-1421)
- スナップリング (92033-1278)
- シール (92049-1391)
- スペーサー (92026-1406)
- ブッシング (44065-1104)
- ガスケット (44045-051)
- フォークオイル ss-8
※なぜかスナップリングだけ注文時と届いたもののパーツNo.が違ってました。
純正部品はいつもPURE TECH(ピュアテック)さんから購入しています。
工具類
- パーツクリーナー
- クレ グリースメイト
- 二硫化モリブデングリス
- レンチ(6角ビットソケット,ソケット)
- トルクレンチ
- ノギス
- ペーパータオル
- マイナスドライバー
- 塩ビパイプ(VP40)
- フォークオイルレベルゲージ
- ロッキングバイス
- インパクトドライバー
※ロッキングバイス、インパクトドライバーはなくても大丈夫
ただその分“力“を必要とすることになるので
力が弱い方はインパクトドライバーはあるとすごく助けになると思います。
フロントフォークは作業中いろんなところで
なかなか「力」を必要とするところがあるのでご注意を!
フロントフォークのオーバーホール
エストレヤのフロントフォークオーバーホールは
普段からタイヤ交換やオイル交換などのメンテナンスを自分で行って
“機械をいじるのにある程度慣れている方“なら問題なく行えると思います。
何度も言いますが、
- メンテナンスに慣れてない
- 機械いじりは苦手
という方が自分で行うときは「しっかり予習」しておくか、
知識と経験がある方に教えてもらいながら行うようにしましょう。
※このブログで紹介するのは「前後ドラムブレーキ」のエストレヤです。
フロントフォークの取り外し
車体をジャッキで固定してから作業に取り掛かります。
フロントフォークを取り外す前に
- フロントタイヤ
- フロントフェンダー
を取り外しましょう。
タイヤの外し方は別の記事で詳しく紹介しているのでそちらを参照してください。
フェンダーは10mmボルト4本で固定されているだけなので
ボルトを外せば簡単に外せます。
フロントフォークを外す前に今回はフォークキャップを“緩めて“おきます。
インパクトドライバーがあればあとからでもいいんですが、
持ってないので、フォークが固定されて力が込めやすいこの段階がいいんですよね!
※あくまでちょっと緩めるだけ!
フォークキャップを緩めたら、フロントフォークを固定しているボルト
- 上が6mm
- 下が8mm
を外します。
あとはフォークを回転させながら下に引き抜いていくと外せます。
固着して回せない場合は上からゴムハンマーなどで叩いて外すといいと思いますよ。
ポイント
上から叩くときは“プラスチックハンマー“や“ゴムハンマー“を使用
どうしても金属のやつしかないってときは
タオルなどを間に噛ませて直接叩かないようにしましょう。
フロントフォークは思ってるより重たいので、引き抜くとき地面にぶつけてしまわないよう注意!
フロントフォークの取り外しはこれで完了!
裏庭に場所を移してオーバーホールしていきます。
フロントフォークの分解
作業するときは地面をオイルで汚す可能性があるので、
新聞紙やブルーシートを敷くことをオススメします。
まずはフォーク内にある古いオイルを抜き取ります。
フォークキャップ(24mm)を外すしておくとき
バネの反発で勢いよく飛び出してくるので
上から押さえつけながら外します。
インナーチューブ(細い方)から
カラー・ワッシャー・スプリングを取り出し、中のオイルを捨てます。
ちょっとわかりにくいですが、
- 新しいオイル→綺麗な赤色で粘度がある
- 古いオイル→真っ黒で水みたい
新しいオイルは匂いがほぼしないけれど、
古い方は船着場みたいな濃い排気ガス?のような臭いがしました。
オイルを抜き取ったら
次はアウターチューブ(太い方)からインナーチューブ(細い方)を外します。
フォーク先端の奥に6mmの6角ボルトがあるので
それを外していきます。
ちなみこのボルトめちゃめちゃ固いので外すに苦労しました。
フォークにロッキングバイスを噛ませ固定しやすいようにしてから
力尽くでボルトを回します!
バキッ!
とやばそうな音が鳴って「やらかしたか?」と思ったけれど
無事外せました。
本当なら特殊工具を使ってフォークの内部からボルトと繋がってるパーツを
押さえてないと空回りしてはずせなかったりするので
そういうときは、一度スプリングとカラーを入れて押さえつけながら回すとはずせます!
こうすることでバネの反発の力を使って空回りを防げるんです!
6角ボルトが無事外せると中から
シリンダユニットと呼ばれるパーツが出てきます。
手に持ってるのがシリンダユニット
シリンダユニットを取り出したら、
インナーチューブとアウターチューブを分けていきます。
ダストシールとクリップはマイナスドライバーを
使えば簡単に取り外せます!
二つを外したあとはインナーチューブを
数回ガンガン引っ張れば取れます!
これでフロントフォークの分解は完了です!
次は「交換するもの・しないもの」に分けて
しないものを綺麗に洗います。
洗うときはパーツクリーナーや水を使って綺麗に洗い
その後、綺麗に乾燥させましょう。
スプリングの長さ
- スプリング自由長:353mm(使用限界346mm)
6年間一度も交換していなかったから
やばいだろうなと思っていたらそうでもなかった!
各パーツの名称
ポイント
- トッププラグ
- Oリング
- カラー
- スプリングシート
- スプリング
- インナーチューブ
- ガイドブッシュ(インナー)
- シリンダユニット
- シリンダベース
- ダストシール
- リテーニングリング
- オイルシール
- ワッシャー
- ガイドブッシュ(アウター)
- アウターチューブ
- フォークボトルアレンボルト
これがサービスマニュアルに載ってるパーツの名称
ちなみに今回は
「2、5、7、10、11、12、13、14、16(ガスケット)」
を交換します。
フロントフォークの組み立て
パーツの洗浄・乾燥が終わったら
いよいよフロントフォークを組み立てていきます!
インナーチューブの先端についてるガイドブッシュ(インナー)
にフォークオイルを塗って取り付けます。
切れ目があるので少し広げながら取り付けると簡単にできます。
インナーチューブにシリンダユニットを入れます。
そのとき、インナチューブの先からシリンダユニットを出しておきます。
ここでスプリングをインナーチューブに入れときます。
スプリングは後で上下しっかり測って入れるので
ここではテキトーに入れておいて大丈夫!
シリンダユニットの空回りを防ぐ目的なので。
シリンダユニットの先にシリンダベース(銀色の筒みたいなもの)を取り付けて
アウターチューブの中へ差し込んでいきます。
この時シリンダベースが途中で落ちないように気をつけて。
うまくインナーチューブを差し込めたら
スプリングとカラーを入れてシリンダユニットをボルトで固定します。
ボルトのガスケットは新品に交換して締めていきます。
本来はこの時
- フォークシリンダホルダハンドル
- フォークシリンダホルダアダプタ
という専門の特殊工具が必要なりますがここでは使いません。
ポイント
ボルトを締めるとき、フォークを地面に押さえつけることで
スプリングの反発でシリンダユニットの空回りを防ぎます。
締め付け規定トルク:20Nm
次はガイドブッシュ(アウター)とワッシャを取り付けます。
取り付けたあとはしっかりおくまで押し込まないといけないです。
ここでも
- フォークアウターチューブウエイト
という専門の特殊工具が必要ですが、塩ビパイプで代用します。
内径40mmの塩ビパイプ(VP40)を使って押し込みます。
軽く数回カンカンと叩くと簡単に奥まで押し込むことができるので
あまり強く叩きすぎないようにしましょう。
注意ポイント
ガイドブッシュ(アウター)がしっかり圧入されているのか確認してください。
ここで圧入してないと、次の次で入れるクリップがくぼみにうまくはまりません。
そうなるとオイル漏れを起こす可能性があるので“しっかり圧入“ これ大事!
次はオイルシールを入れていくんですが、
インナーチューブで傷をつけてしまうとオイル漏れの原因になる可能性があるので
ラップをインナーチューブに被せます。
こうすることでオイルシールに傷をつけてしまう可能性を減らします。
オイルシールに「二硫化モリブデングリス」を塗ります。
グリス塗ってラップしてるとはいえ、インナーチューブにはめるときは
気をつけて傷つけないようにします。
オイルシールをはめ込んだら
オイルシール圧入にはまた塩ビパイプを使います。
圧入する力が偏らないように少しずつパイプを全体的に叩いていきます。
注意ポイント
オイルシールが歪むとこの後入れるクリップがうまく入らない
ことがあるのでしっかり圧入しましょう!
※叩く力は最初「コンコンコン」と全体的に軽く叩いて、最後に少し強め叩くとOKです!
“全体的に力の偏りをなくすイメージ“これ大事!!
オイルシールを入れたら次はクリップをいれます。
クリップは手でしっかり入れるのは難しいので
マイナスドライバーを使います。
クリップはそこまで難しくなく、
意外とすんなり入ります!
注意ポイント
マイナイスドライバーでインナーチューブを傷つけないように!
クリップをはめたらチューブ内にゴミが入るのを防ぐための
ダストシールをはめます。
これもはめるときはインナーチューブにラップを被せ
ラップにオイルを塗りシールに傷をつけないようにします。
これで細かいパーツの組み立ては終わり!
次はオイルを入れて量を調整していきます。
オイル調整
フォークオイル量
- オーバーホール時:372 ± 4 mL
- オイル交換のみ:約316 mL
オイルレベル
- スプリングなし(圧縮時):インナーチューブの上端から150 ± 2 mm
オイル入れるときは
- スプリングやカラーは入れない
- インナーチューブを一番下まで圧縮する
オイルを入れたらインナーチューブを数回上下させてオイルを全体に行き渡らせて
空気を抜いて、その後しばらく放置
その間にちょっと掃除したり
オイルレベルゲージを調整する道具の用意をします。
使うのは「デイトナガレージのフォークオイル油面調整ツール」
ストッパーを「150mm」に合わせてフォーク内の
余分なオイルを吸い取ります。
簡単にサクッと吸い取れると思ったら
めちゃめちゃ固い!!!
フォークを固定して両手で引っ張らないと無理なくらい固い!
これを2本行います。
オイルを入れて空気も抜いたら最後に
「スプリング、スプリングシート(ワッシャー)、カラー」を
入れてトッププラグ(キャップ)を閉じます。
サービスマニュアルには
径が小さい方が下(タイヤ側)と書かれているので
ノギスで測ります。
それぞれ「31.3mm」と「32.3mm」と1mmの差があるので
ちゃんと測っておきます。
全部入れたら上から押さえつけながらキャップを締めます。
スプリングの反発力があるので全体重をかけて押さえつけながら
締めていくんですが、これがまた大変…。
締めれた!と思って少し力を抜いたら
ポンッ!
ってキャップが飛んでいくこと数回
なんとか締められました。
ここではキャップを規定トルクで締められなので、
外れない程度に締め付けておきます。
車体へ取り付け
取り付けは外した時の逆の手順でつければOK
この時トップブリッジ(メーター側のパーツ)から飛び出す長さをしっかり合わせます。
これがズレるとタイヤもずれてくるので
心配なら何か測れるもので正確に合わせておきましょうね。
フォーク固定してるボルトは
- 6mmボルト → 20Nm
- 8mmボルト → 34Nm
が規定トルクになってます。
フェンダーは規定トルクは記載ないので
動かない程度にしっかり締め付けておきます。
フォークを取り付けたらキャップを締め付けます。
キャップは24mmソケットで23Nmで締め付けます。
キャップを2つしっかり締め付けたらフェンダー、タイヤを取りつけます。
フロントタイヤの締め付けトルクは写真を参照。
詳しくは別記事で詳しく解説しています。
最後に各部の確認を済ませたらフロントフォークのOH作業は全部終わりです!
お疲れ様でした!
まとめ
エストレヤのフロントフォークのOHを初めて行いましたが、
思っていた以上に簡単な作業でした。
ただ、要所要所で「力」が必要になってくるので
インパクトドライバーなどで代用できるところは代用していくことをオススメします。
何度も言うようにこの作業は「中級者」向けの作業なので
メンテナンスに慣れてない初心者の方はできるだけ知識と経験がある方と一緒に
作業することをオススメします。
もし周りにいないときはしっかり「予習」「イメトレ」をしておきましょう!
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